フォントを選ぶとき、思い出してほしいこと
自分の名刺をデザインする時、皆さんはどこに最もこだわりますか?
名刺で伝えたい最も大切な情報は、名前。それを伝えるのは…そう、「文字」ですよね。
どんな形の文字を選ぶかによって、一つひとつ情報の伝わり方も、デザインの雰囲気も変わってきます。
その文字の形を、「フォント」と呼びます。当たり前に使っている方も多い言葉ですが、なぜそう呼ぶのでしょうか?
そこには意外なロマンがありました。
今、活版印刷が注目されるワケ
突然ですが、近年見直されている「活版印刷」という印刷方法はご存知でしょうか。
たとえば人気雑誌『大人の科学マガジン(学研プラス)』の最新号。
付録が小さな活版印刷機ということで、SNSなどで話題にのぼっていました。
この情報にザワつくwhooスタッフ。筆者も、興奮してポチっと予約をしてしまったひとりです(…楽しみ!)
かわいらしいその機械を見てもわかるように、活版印刷は、「活字」という一文字ずつの「版(はん)」を手で組み合わせて、それを紙へギュッとプレスして、印刷しています。
手作業によって生まれる独特の凹みやインクのにじみが味わい深く、物としての存在感を生みます。
そんなこんなで、デジタルと逆行する形で今また良さが見直されており、ステキなクリエイターさんや若者からの脚光を浴びているのですね。
ちなみにwhooの母体である印刷会社(株)帆風でも活版印刷サービスを行なっています。
昔は一つひとつ、人の手で
当たり前といえばそうなのですが、その昔はこの印刷方法「しか」なかったのです。
つまり、今手元にある新聞や本も、全て「活字」という一文字ずつの「版」を手で組み合わせて、言葉や文章を印刷していたのです。
実は、(株)帆風も、創業当初は製版会社としてスタートしています(写真や文字などをほぼ手作業で組み合わせて、印刷の版を作る作業です)。
かつての諸先輩方によれば、寝る間を惜しむほどの作業量で、今と比べ物にならないほど、日夜忙しかったと聞きます。
そんな様々な先代の苦労を経て、現在の印刷技術が発展していったのですね。
さて「フォント」のルーツとは
そこで本題になりますが、フォントという言葉の語源は旧ラテン語でfunditus(=found)。
つまり、〈金属を〉溶かす、鋳る、または〈金属製品を〉鋳造するという意味だそうです。
写真のように、活字の形状は一文字だけのハンコのような形をしていて、金属を鋳造して作られていました(今ではゴムなど、素材にもバリエーションがあります)。
その工程そのものが、フォントという名前の由来です。
Font=フォントという名前には、およそ1000年にも及ぶ、印刷の歴史が込められているのです。
誰でも簡単にフォントが選べる時代へ
かつての印刷方法での、一つひとつ、手間をかけて行っていたフォント選び。
それが今では、PCやスマホからカンタンに選べちゃうなんて。もうこれは、文明に感謝しかありませんね!
whooのサイトに用意している書体は32種。
活字で置き換えると、一体どのくらいの物量になるのでしょうか…(考えると日が暮れそうなのでそれはまた今度として)。
フォントを選ぶ際、1000年前の活字選びに思いをはせてみるのも、また一興かもしれません。
ぜひ詳細は、サイト内のデザインを触りながら、体験してみてください。
Written by occo